宮田あやこ
ADIOS LIVE in TOKYO

1970年代アメリカ西海岸ロック、リンダ・ロンシュタット、イーグルス、レオン・ラッセル、キャロル・キング、ボズ・スキャッグス‥の名曲が宮田あやこの慈しみある、温かな、鮮やかなヴォーカルでよみがえります。

17歳で家を出た
あなたと共に
カリフォルニアの浜辺

マルガリータを一晩中飲み明かした
あの古びた酒場
カリフォルニアの浜辺を離れて

私が不誠実だったと思わないで
そんな気難しい顔をしないでね
ADIOS さよなら

我々は成し遂げられなかったけど
でももう少しまで近づけた
ADIOS さよなら

北へ行くわ
丘が冬の緑の場所
あなたから去らなければならない
カリフォルニアの浜辺から

行くところは
水は澄み、空気は清らか
カリフォルニアの浜辺よりも

終わらぬ夏の我々の夢
壮大すぎていたかもしれない
ADIOS さよなら

あの丘の真っ赤な夕陽が懐かしい
でもあなたがいないのが一番寂しい
ADIOS さよなら

BY JIMMY WEBB

アルバム&収録曲紹介

曲名をクリックすると紹介文を表示します。

「ADIOS」は2016年5月30日東京新宿でのライブが収録されている。当初ライブCD制作の計画はなかったが、あやこの歌唱がいつにもまして瑞々しく、集中しているこの一夜の記録を残すべきと判断した。マスタリング/編集は松本裕氏にお願いした。エピックからリリースされた宮田あやこファースト・アルバム「LADY MOCKIN’ BIRD」のエンジニア&プロデューサーである。36年ぶりの共同作業となった。あやこの歌唱、メンバーの演奏がリアルに再現された。感情の高ぶり、メンバーの唸り声、演奏ミス、観客の声援、手拍子、グラスの氷が鳴る音、全てそのまま収録されている。

「ADIOS」は1970年代アメリカ西海岸音楽へのオマージュアルバムである。「ADIOS」に収録された楽曲の作詞家、作曲家、演奏家の多くはこの世にいないか第一線を退いている。宮田あやこの役目は素晴らしいあの時代の楽曲を次の時代に繋ぐことだ。人は「さよなら」を繰り返すが「さよなら」がそれぞれの人生を綾どり、形作る。「ADIOS」が皆さんの心にしまわれている大切な記憶を呼び覚ますきっかけになればこれに勝る喜びはない。

レオン・ラッセルは1960年代ロサンジェルスでセッションミュージシャンとしてキャリアをスタートさせる。ゲーリー・ルイス&プレイボーイズ、ヴェンチャーズ、バーズ、フィル・スペクターの仕事などで才能を発揮する。この曲はレオン・ラッセル3枚目のソロ・アルバム「カーニー」に収録されている。今回のライブの編成は2キーボード&ベースが基本。細井豊がそのマルチプレイヤーぶりを発揮、八面六臂の活躍で、とても3人編成には聴こえない。この曲の間奏ではフルートを吹く。
レオン・ラッセル/ボニー・ブラムレット作。ジョー・コッカー「MAD DOGS AND ENGLISHMEN」コンサートの中でリタ・クーリッジにより歌われた曲。カーペンターズが大ヒットさせた。ギタリストに恋したグルーピーの心情を歌った曲だが、あやこの歌唱、マイク・ダンのハーモニー、細井のハーモニカがこの曲の悲しさせつなさを浮き彫りにしている。
ボズ・スキャッグスは1970後半~1980年代AORの旗手として、ロック&ソウルをLIGHT&MELLOW化して大成功を収めた。しかしその根底にはブルース、R&Bへの深い敬愛がある。都会の男に憧れた南部の田舎娘が夜な夜な性的な体験を通して自由を獲得していくといったストーリーは当時斬新だった。山下泰司の書いた3声のコーラスが、曲に新たな魅力を加えている。
都会で孤独に働く若者がいつの日か故郷で待つ恋人、友人たちと青い入江で再会できることを夢見る歌。ロイ・オービソンの佳曲を1977年にリンダ・ロンシュタットがカヴァーヒットさせた。リンダの代表曲である。あやこはリンダ歌唱に敬意を表しつつ、曲にぬくもりを加えた。マイク・ダンのハーモニーと細井豊のアコーディオンによる間奏はメキシカンフレイバーにあふれている。
イーグルスは70年代カリフォルニアを代表するバンドだ。しかしメンバー誰ひとりとしてカリフォルニア出身者はいなかった。2016年グレン・フライ突然の逝去は1970年代を共有した者にとってショックは大きかった。この曲で細井豊はアコースティックピアノを弾く。リハーサルで一回合わせただけにも関わらず、あやこと細井は同じ時代を生きた音楽家同士が持つ絶妙の呼吸でこの曲を演奏する。
あやこはエピックからのデビュー当時、リンダ・ロンシュタットの「YOU’RE NO GOOD (悪いあなた)」をライブでよく歌っていた。頭の部分が同じコード進行の両曲をくっつけるといった裏技を使っている。間奏における各自のアドリブがステージを盛り上げる。
キャロル・キング作アルバム「タペストリー」の中の1曲。3・11の直後からあやこは自身の救済を含めこの曲を歌い始めた。この数年歌う機会は減っていた。しかし今回のライブ直前に再び熊本/大分で大きな災害が起こってしまい、この曲の出番がやってきた。山下泰司のスピリチュアルな前奏に始まり、あやこの歌が次第に熱を帯び細井豊が間奏でオルガンを熱演する。そしてクールダウンしそっと曲を終える。鎮魂曲である。
1989年ジミー・ウエッブが書きリンダ・ロンシュタットにより歌われた曲。1960年代カリフォルニアで生まれたムーブメントには、アメリカ本土のみならず世界中の若者が呼応した。時代が経過しそこに留まる者、去る者、様々な人生模様がその後展開する。そんな輝いていたカリフォルニアへの想いを、ふたりの男女の別れを通して歌った曲である。
ジェイムス・テイラーが歌ったこの曲は、激動の60年代後半ニュー・ヨークからロサンゼルスに移り住んできたキャロル・キングにより書かれた。キャロル自身も「タペストリー」で歌っている。いつの時代にでも歌い継がれるべき名曲だ。あやこは観客に語りかけるように歌う。途中感極まりコントロールを一瞬失うが、観客の温かな反応と合唱で曲を終える。

『ADIOS Live in Tokyo』

 宮田あやこの新しいアルバムには『アディオス』というタイトルが付けられている。アルバム・ジャケットの深紅に染まった空は、「Adios」の歌詞にある“blood-red sunset”のイメージだろう。

 そこでは、慎重に選び抜かれた曲がていねいに縫い合わされ、1枚の布のように仕立て上げられている。収められた9曲は ’70年代のある空間を満たしたロックの名曲ばかりで、結果的にアルバムは ’70年代の追想、あるいはその時代の歌への賛辞になっている。その歌の連なりから湧き上がってくる美しく、そしてちょっぴりほろ苦い味わいは、’70年代に多感な時期を送った人なら誰もが覚えがあることだろう。

 彼女はあらためてそうした歌にそっと手を伸ばし、優しく抱きしめるようにうたっている。アルバムを聴いているうちに、自分が「かつていた場所」について考えていることに気づく。そしてさらに、「そこからどれだけ遠くにきてしまったか」を、小さなため息とともに思い返す。これは極めて個人的な感傷なのだろうか。

 たとえば、「Way Over Yonder」でうたわれている“道の彼方”。そこにわれわれはたどり着いたのか、あるいは途中で道に迷ってしまったのか。“その場所”はいまもあるのだろうか。あるいは、「Desperado」の“ならず者”は“フェンスの中から出てきた”のだろうか。“手遅れになる前に、誰かに愛された”だろうか……。

 アルバムのタイトルとなった「Adios」では、’60年代後期にカリフォルニアに向かった若者たちの“いまの姿”がうたわれている。あの時代を経て、その後の人生を歩んだ者たちの肩にそっと手を置くような歌。その歌の中に数回出てくる“カリフォルニア・コースト”という言葉の、なぜか物悲しい響き。歌の主人公は、その思いが大きな分だけ悲しいわれわれの現存なのかもしれない。

 こんなことを思わせる日本の“カヴァー・シンガー”は、ほとんどいない。宮田あやこはいつも、歌に敬意と愛情と優しさを込めてうたう。聴く者を柔らかく包み込むような、温かみのある彼女のヴォーカルは、自然発酵するパン種のように、歌のイメージを膨らませる。

 あの時代の歌は、いま、人々にどのように響くのだろうか。いまもこれらの歌は、人々の心を捕らえるだろうか。そうあってほしいと願うし、このアルバムで聴くことのできる彼女の心を込めた歌は、きっと人々に届くはずだと思う。

山本智志
音楽ジャーナリスト、「アサイラム・レコードとその時代(音楽出版社)」企画編集人

メンバー紹介

ADIOS LIVE in TOKYOを演奏したメンバーです。

宮田あやこ

VOCAL

1980年エピックソニーよりアルバム「LADY MOCKIN’ BIRD」でデビュー。
70年代アメリカ西海岸の音楽はシンガー宮田あやこを育んだ。
札幌BAR GERSHWINを拠点に歌い続けている。


細井豊

ORGAN. SYN. AND ALL OTHER INSTRUMENTS & CHORUS, ARRANGEMENT
PLAYS PIANO ON "DESPERADO"
COURTESY OF SENTIMENTAL CITY ROMANCE

結成42年を誇るセンチメンタル・シティ・ロマンスのキーボード奏者。
竹内まりやを始め、彼をファーストコールピアニストに指名するシンガーは多い。
ADIOSではマルチプレーヤーの才能を存分に発揮している。

マイク・ダン

BASS & CHORUS
COURTESY OF PARACHUTE

ニュージーランド出身。日本有数のセッションミュージシャンが結成した伝説のバンド、パラシュートでヴォーカル&ベース担当。日本での活動歴は40年を超える。デビュー前のビージーズと活動を共にしていた。

山下泰司

PIANO & CHORUS, ARRANGEMENT

現在札幌で最も熱いピアニスト。多くの歌手に信頼されている歌伴の名手。
ジャズ&ロックを自由に行き来する万能ピアニスト。宮田あやこにはなくてはならない存在でアレンジャーとしても活躍している。

MASTERING BY 松本裕 AZABU WEST STUDIO

ハートランドミュージック レコード番号 HMCD-1601